奈良県内で環境に関する取り組みを行っている「匠」たちが、それぞれの活動を報告し、学び合い、脱炭素で持続可能な社会を次世代へ引き継いでいくため、連携の「環」を拡げようと、2013年より「匠の環」、2018年からは「匠の環、それから」として開催してきました。この交流会を通じ、脱炭素社会を築き次世代へ引き継いでいくための具体的な取り組みについての情報交換と情報共有の場とし、さらなる実践につなげていただくことを目指しています。2020年初めに全世界に広がった新型コロナウィルス感染症の影響は、私たちの活動にも新たな課題をもたらし、オンラインによる活動や距離を保ちながらの啓発活動を行うなど工夫しながら取り組んでいます。今も、気候変動の影響は深刻化しておりその対策は待ったなしです。日本では、2020年に「2050年カーボンニュートラル」を宣言、2021年には「2030年度の温室効果ガス削減目標46%(2013年度比)」を表明しました。2021年11月のCOP26「グラスゴー気候合意」では、パリ協定の、産業革命以前に比べて1.5℃に抑える努力を追求することが明記されました。私たちは、カーボンニュートラル実現に向け日々の暮らしの中で取り組むことが大切だと思います。
県内各地で地道な環境活動を行っている「匠」たちの参加のもと、ゲストの活動事例紹介と30団体のポスターセッション、そしてご参加いただいた約90人のみなさまと、交流する機会を持つことが出来ました。当日は、ご来賓の、仲川げん奈良市長、野田純一奈良県水循環・森林・景観環境部次長にご挨拶をいただきました。ご参加・ご協力いただきました各地球温暖化対策地域協議会のみなさま、各自治体職員のみなさま、NPO等団体のみなさま、市民のみなさま、ありがとうございました。
今後も共に脱炭素で持続可能な社会を次世代に引き継いでいくために、奈良の地より連携の「環」を拡げていくため、取り組んでいきたいと思います。
「奈良の環境家計簿」に取り組まれている方で、継続的で熱心な取組みをし、二酸化炭素の排出削減の貢献が顕著な方を、奈良県より表彰させていただきました。事前に、奈良県水循環・森林・景観環境部及び奈良県地球温暖化防止活動推進センターにて厳正なる審査を行い、野田純一奈良県水循環・森林・景観環境部次長より3家族、2団体(パナソニック松愛会 奈良東支部、パナソニック松愛会 奈和支部)を表彰いたしました。
「気候変動最新動向」
奈良県地球温暖化防止活動推進センター長:当麻潔
気候変動に関する国際情勢から、1.5℃に抑える努力をすると約束した2015年の「パリ協定」、2021年11月のCOP26の成果文書「グラスゴー気候合意」、また日本での温室効果ガス削減目標(2030年度に2013年度比46%削減)達成のためには、①省エネと②創エネを進めて行く必要があり、そのための啓発や一人一人の実践がますます重要であると説明。奈良県でも、脱炭素社会に向けて「環境総合計画(2021-2025)」が策定され、行政での取り組みと、私たち一人一人のできることを紹介しました。
本年度のテーマに基づき、カーボンニュートラル実現に向けて私たちにできることの一つとして、企業の取り組み事例をご紹介いただきました。
「住宅の屋根にソーラーを~初期投資なしで脱炭素へ~」
シャープエネルギーソリューション株式会社
BtoB事業開発部長 松本将之さん
世界で進むカーボンニュートラルに向けた動きと日本の2050年カーボンニュートラル宣言により、政府の公表等では、「2030年度46%削減」を実現させるため、「2030年度再エネの電源構成が約36%~38%程度必要」と試算され、太陽光発電の導入のために、住宅分野においても新築戸建住宅の6割に太陽光発電設置の検討を表明。このような政策の進展に伴い、段階的に新築住宅の太陽光発電の搭載率が高まる見通しがあり、今後の動きとして初期費用ゼロ円で設置が可能なPPA・リースなどの第三者保有モデル導入の議論が活発にされている(国も補助政策を検討)とのお話でした。また、46%削減目標実現には、2019年と比べてほぼ倍の再エネ導入が必要で、設置する場所の一つとして住宅の屋根が考えられているそうです。
PPAとは、需要家の初期費用0円で、太陽光発電システムや蓄電池をPPA事業者が導入し、需要家が「発電した電気」を利用するサービスであり、その取り組みとして「COCORO POWER」をご紹介いただきました。二つのプランがあり、定額制で、蓄電池セットの場合は停電にも強く、設置後もサポートがあり安心とのことでした。
これからは、再エネで発電し貯めて使うことが脱炭素に繋がり、エネルギーの地産地消となり防災住宅にもなるのではなかいと思いました。
市民・事業者・行政で作る地域新電力会社「いこま市民パワー」の取り組み
いこま市民パワー株式会社 係長 高橋正朗さん
生駒市民パワーは、生駒市が51%出資した株式会社。
まちの魅力向上・課題解決に、エネルギーを切り口に取り組むことを目指しています。市民、行政、事業者が一緒に取り組んでいる。地域でつくった電気を地域で使うため、地産電源を最優先(約10%)とし、バックアップ電源に再エネ電源率の高い電力会社(みんな電力)と契約。市民から出資(融資)を募り、市民共同発電所を設置し、市内で電源を確保、供給、消費し、エネルギーの地産地消に取り組んでいるとのことです。これまでに、1~4号機を整備(FIT制度を活用)し、5号機は、FITを使わず、全量隣接する介護老人保健施設に供給され「完全自家消費型」が特徴とのことでした。
5年後の目標として地産の再エネ比率を約40%とし、地産の再エネを最優先で調達し、生駒市に建設の木質バイオマス発電(2024年竣工予定)からの調達などを実施、2025年に地産再エネ比率約40%の目標を達成する見込み。これからの脱炭素に向けた取り組みとして、市民共同発電所の設置や家庭用の卒FIT電気の活用なども行っていくとのことです。
また、収益の地域還元を実施。ICTを活用した登下校見守りサービスや100の複合型コミュニティづくりへの投資を実施しているとのことです。地域の活性化、電力事業の収益をベースに地域課題解決と市民活躍の受け皿となる「まちづくり会社」を目指し脱炭素社会を作っていくとまとめてくださいました。脱炭素につながるエネルギーの地産地消と地域活性化、課題解決にむけた取り組みの事例として大変参考になり、学ぶことができました。
県内で活動する様々な団体、30団体にご参加いただきポスターセッションを行いました。今年のテーマに合わせての取り組み等の紹介や、地球温暖化対策地域協議会の活動の様子や自然環境保全の取り組み、環境教育、環境とエネルギーについて、3Rの活動などご紹介いただきました。それぞれの団体のみなさまに、ポスターや展示物を前に簡単な活動紹介もしていただき、声を通して感じる熱気に力強さを感じ、活動の励みにもなりました。
合わせてSDGsの17の目標について各団体の活動にあてはまる目標を考えてもらい展示物とともに掲出しました。
交流会では、「カーボンニュートラル!私たちに何ができるか」をテーマに5グループに分かれ、意見交流を行いました。参加者の自己紹介と簡単な団体紹介、ゲストへの質問など、カーボンニュートラルに実現のために、一人ひとりには何ができるのか何が必要であるか等について意見交流をし、テーマを深める時間を持てたのではないかと思います。
来場者アンケートには、「最新のカーボンニュートラルの情報を得ることができた」「ソーラー発電の現在未来への進行について、よく理解できた」「生駒市民のみなさんの先進性を感じた」「脱炭素に向けた具体的な方策を知ることができた」などの意見があり、多くの方々から好評をいただきました。また、参加団体の活動展示や交流会を通して、「各団体の考えや取り組みを知ることができてよかった」「日頃の自分の活動を客観的に考える事ができた」「改めて、太陽電池、蓄電池に期待を感じました」「それぞれの悩み事を聞くことができた。現場の意見として参考になった」などの感想をいただきました。今後もつながりを大切にし、ご参加いただいた皆さまの取り組みの一助となることが出来れば幸いです。