奈良県内で環境に関する取り組みを行っている「匠」たちが、それぞれの活動を報告し、学び合い、脱炭素で持続可能な社会を次世代へ引き継いでいくため、連携の「環」を拡げようと、2013年より「匠の環」、2018年からは「匠の環、それから」として開催してきました。この交流会を通じ、脱炭素社会を築き次世代へ引き継いでいくための具体的な取り組みについての情報交換と情報共有の場とし、さらなる実践につなげていただくことを目指しています。
毎年のように世界中で起きている猛暑や豪雨や台風等による私たちの暮らしや生き物への影響に、気候変動の深刻さを感じます。
2015年のパリ協定を受け、世界は脱炭素に向けて行動しています。我が国も2020年10月に「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする(カーボンニュートラル)」を宣言しました。政府は、昨年地球温暖化対策計画を改定し、2030年の温室効果ガス排出量を2013年度比46%の削減を目指し、さらに50%の高みに向け挑戦を続けていくとしています。家庭部門のCO2排出量は、66%削減という非常に大きな目標を設定しました。これらの目標達成には、国民一人ひとりの取り組みと行動変容が必要です。
地方自治体も2050年までにCO2排出実質ゼロを目指し、「ゼロカーボンシティ宣言」をする自治体が増えてきており、2022年10月31日現在、全国で797自治体が宣言しています。奈良県においても、県、生駒市、天理市、三郷町、田原本町、葛城市が宣言しています。ただ、奈良県内には、39の市町村があり、多くの自治体がまだ宣言をしていません。そこで、もっと多くの自治体に宣言し実現していただこうと、今年の「匠の環、それから」のテーマを、「ゼロカーボンシティをみんなでつくろう」としました。
県内各地で地道な環境活動を行っている「匠」たちの参加のもと、ゲストの事例紹介と29団体のポスターセッション、そしてご参加いただいた約90人のみなさまと、交流する機会を持つことが出来ました。当日は、ご来賓の野田純一奈良県水循環・森林・景観環境部理事にご挨拶をいただきました。ご参加・ご協力いただきました各地球温暖化対策地域協議会のみなさま、各自治体職員のみなさま、NPO等団体のみなさま、市民のみなさま、ありがとうございました。
今後も共に脱炭素で持続可能な社会を次世代に引き継いでいくために、奈良の地より連携の「環」を拡げていくため、取り組んでいきたいと思います。
本年度のテーマに基づきゼロカーボンシティ作りの取り組みとして4事例をご紹介いただきました。すでにゼロカーボンシティ宣言をされている天理市と田原本町の取り組みの紹介。また、ゼロカーボンシティ実現には、省エネ、創エネ、森林吸収が必要で、創エネと森林吸収の事例を2団体から紹介していただきました。
行政の取り組み事例として、天理市環境政策課の山本さんからは、天理市のPPA事例について、PPA導入の経緯やメリットなどについて説明がありました。田原本町環境未来推進課の植村さんからは、環境未来推進課の新設から啓発イベントの実施、役場庁舎でのSDGsやリサイクルの活動、また、川上村と連携した森林環境活用事業や今後の動きについて説明がありました。
そして、県内の団体の取り組みとして、東吉野村小水力利用推進協議会の森口さんからは、地域の活性化を目的に旧つくばね発電所を復活させ水力発電所を立ち上げたこと、多くの人とのつながりと地域の自然を活かした活動により、若い世代も増えて、子ども食堂などと連携した取り組みもされていることついてお話いただきました。一般社団法人大和森林管理協会の谷さんからは、森林吸収源のクレジット化の取り組みとして、吉野林業の成り立ちや時代背景、これからの林業や山林についての思いと脱炭素社会実現に向けての森林保全の取り組みの重要性をお話いただきました。
県内で活動する様々な団体、29団体にご参加いただきポスターセッションを行いました。テーマに合わせた取り組み等の紹介、地球温暖化対策地域協議会の活動の様子や自然環境保全の取り組み、環境教育、環境とエネルギーについて、3Rの活動、食の取り組みや地域に根ざした活動などをご紹介いただきました。それぞれの団体みなさまの活動への思いを知る機会となりました。
合わせてSDGsの17の目標について各団体の活動にあてはまる目標を考えてもらい展示物とともに掲出しました。
交流会では、「ゼロカーボンシティをみんなでつくろう」をテーマに5グループに分かれ、意見交流を行いました。参加者の自己紹介と簡単な団体紹介、ゲストへの質問など、カーボンニュートラル実現に向けて、個人できる取り組みから、地域の特徴を活かした取り組み、続けていくことの大切さなど、参加者同士の情報を共有し意見交流をすることができました。
来場者アンケートには、「各発表において、具体的な発表内容でわかりやすかった。」「PPAの取組が進んでいるのが頼もしいと感じた。水力、バイオマスなど再エネを中心としたエネルギーへの取組が参考になった。」「奈良県は70%森林地域のため、市部と村部、人の多い所と過疎地の協力が必要なことがわかった。」などの意見があり、多くの方々から好評をいただきました。
また、参加団体の活動展示や交流会を通して、「交流会を通じて、エコに対する自分の気持ちがさらに前向きになりました。」「他団体との交流がとても魅力でした。」「無関心層へどのように働きかけるかがやはり課題だと思う。」「環境活動を実施している他団体の具体的活動がよくわかった。」などの感想をいただきました。
脱炭素社会実現に向け具体的な行動に取り組むために、つながりを大切にし、ご参加いただいた皆さまの活動の一助となることが出来れば幸いです。