ご報告

奈良県内で環境に関する取り組みを行っている「匠」たちが、それぞれの活動を報告し、学び合い、脱炭素で持続可能な社会を次世代へ引き継いでいくため、連携の「環」を拡げようと、2013年より「匠の環」、2018年からは「匠の環、それから」として開催してきました。この交流会を通じ、脱炭素社会を築き次世代へ引き継いでいくための具体的な取り組みについての情報交換と情報共有の場とし、さらなる実践につなげていただくことを目指しています。今年は、NASO設立20周年、センター指定15周年記念の年となりましたが、2020年初めに全世界に広がった新型コロナウィルス感染症の影響は、私たちの活動にも新たな課題をもたらしました。今回の交流会の開催については、テーマや開催方法等について検討を重ね、会場とオンラインの併用開催という形にしました。今年の夏も温暖化の影響とみられる猛暑、7月の豪雨による災害など、地球温暖化は将来の問題ではなくすでに現れていると感じます。

当日は、ご来賓の仲川げん奈良市長、野田純一奈良県水循環・森林・景観環境部次長にご挨拶をいただきました。記念行事と言うことで、関係各所より祝文もお寄せいただきました。そして、会場での参加者約80人、オンライン参加者約20人、計100人を超えるに皆さまにお集まりいただき、基調講演、活動事例紹介、ポスターセッション、交流会など、このような状況の中でもみなさんとお会いでき、久しぶりの方もおられ交流できたこと、本当に感謝しています。ご参加・ご協力いただきました各地球温暖化対策地域協議会の皆様、各自治体職員の皆様、NPO等団体の皆様、市民の皆様、ありがとうございました。

今後も共に脱炭素で持続可能な社会を次世代に引き継いでいくために、奈良の地より連携の「環」を拡げていくため、取り組んでいきたいと思います。

匠の環、それからのようす

タイムカプセルの開封

2010年、NASO設立10周年記念「ユース国際環境シンポジウム」開催の際に募集した子どもたちの作品をタイムカプセルに入れました。10年後に一度開封することになっており、この機会に開封をし、当時の作品を披露しました。

タイムカプセルの作品展示

基調講演

今年度は、国立環境研究所より、江守正多さん(国立環境研究所 地球環境研究センター 副センター長)にリモートでご講演いただきました。「気候危機・コロナ危機と社会の大転換」と題し、気候変動のもたらす大きなリスクと、パリ協定での、2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力をという目標を達成することの重要性を再認識し、そのためにこれから私たちがどのように考え、行動していくことが大切なのかをわかりやすくお話しくださいました。

新型コロナウィルスの影響で世界のCO2排出量は一時的に17%減少し今年度通しての減少は7%ぐらいになり、毎年7%減れば気温上昇を1.5℃ぐらいは目指せることになるが、毎年7%ガマンするのは現実的ではない。無関心層への波及がすすまない現状を考えたとき、ガマンなど負担意識が根強いが本来は生活の質が高められるとのメッセージをしっかり打ち出すことで、人々の意識を変えシステムの変化を起こすこと。そのために国民の3.5%以上が本当に大事だと思い行動することが必要であるとのお話しに、視野を広げて大きく物事を捉え、私たちの活動を社会の中でどのように進めていくことが大切なのかを改めて考えさせられました。コロナ危機で暮らしが大きく変わり新しい暮らしとなったように、気候危機では私たちにできることの視野を広げ脱炭素に向けエネルギーや交通等、新しい社会システムをつくること、そのために行動することこそが、脱炭素社会、「温室効果ガスの排出量を2050年に実質ゼロにする」という目標を実現できるのだと学びました。それと同時に、どう行動するのか、格差や高齢化の問題など地域社会の課題にも合わせて取り組むことが大切だと教えていただきました。

「基調講演」のようす

活動事例紹介

長年環境NPO活動を続けてこられた2団体、NPO法人サークルおてんとさん理事長清水順子さん、NPO法人うだ夢創の里理事長仲尾京子さんに活動事例紹介をしていただきました。

清水順子さんからは、2002年の設立当初からの活動を振り返り、奈良県でも市民共同発電所をつくる活動を始められたこと、おてんとさん発電所プロジェクトの仕組みやこれまでに設立された発電所の紹介などを、また、仲尾京子さんからは、地域でゴミの分別回収をはじめ、リサイクルやリユース、環境出前講座など楽しみながら続けてこられたこと、2011年に地域の拠点として廃園になった保育園を活用し「うだ夢創の里」を設立し地域に根ざした活動をされていることをお話ししてくださいました。最後に、奈良ストップ温暖化の会(NASO)理事長当麻潔より、NASOの20年の歩みを振り返り、次の10年、20年と2050年の脱炭素社会実現に向けてみなさんと共に活動を継続していきたいとメッセージを送りました。

活動事例紹介 NPO法人サークルおてんとさん理事長清水順子さん
活動事例紹介 NPO法人うだ夢創の里理事長仲尾京子さん

ポスターセッション

県内で活動する様々な団体、29団体にご参加いただきポスターセッションを行いました。各団体の取り組み等の紹介や、地球温暖化対策地域協議会の活動の様子や自然環境保全の取り組み、環境教育、環境とエネルギーについて、3Rの活動などご紹介いただきました。また、SDGsの目標について展示物とともに掲出しました。それぞれの団体のみなさまに、ポスターや展示物を前に簡単な活動紹介もしていただきました。

ポスターセッションのようす
ポスターセッションのようす
ポスターセッションのようす
ポスターセッションのようす

交流会(分科会)

交流会では、各団体がwithコロナの時代にどう取り組むのか、活動事例を行った三者の会場3分科会とオンライングループに分かれて意見交流をしました。限られた時間の中で、交流を深めるのは難しいところもありましたが、みなさまの声を聴く機会を持てたこと、このコロナ禍の中、同じように悩み試行錯誤しながら活動を行っていること、悩みを共有することで励まされたり、これからの活動を考える機会となっていればと思います。気候変動対策は地球規模の課題であり、日本もようやく「温室効果ガスの排出量を2050年に実質ゼロにする」という目標を打ち出し社会も動きだしている中、私たちの活動を通じて脱炭素へ向けてSDGsの理念を持ち進めていきたいと思います。

「交流会(分科会)」のようす

アンケート集計結果

来場者アンケートには、「脱炭素はしんどいことだけではなく、資源の少ない日本は有利であり、価値のあることであるというお話は、よい考えだと感じました。」「負担意識を変えていくという考え方が参考になりました。」「活動事例を伺い、長きにわたり活動され、一歩一歩成長されていることに感動いたしました。」「活動の歴史が見え取り組みには長い時間がかかると実感した。」などの感想があり、多くの方々から好評をいただきました。コロナ禍の中、初めての会場とオンラインの併用開催となり、会場の準備や音声が聞き取りにくいなど進行にも至らないところが多々あったと思います。そのような中、顔を合わせ、声をかけ合い、少しでも交流する機会となっていれば幸いです。参加してくださった皆様のご意見を参考に今後も活動を進めて参りたいと思います。